「仕事ができない人に優しくできない」とお悩みの方は、おそらく仕事に真摯であり、高い成果を求める情熱をお持ちの方だと思います。そうでなければ、わざわざ「仕事ができない人に優しくできない」というキーワードで検索することはないでしょう。
残念ながら、仕事に意欲的である方が上司や同僚のスキルに失望し、「この環境では頑張っても無駄だ」と感じ、ついには自らのモチベーションまで失ってしまうことがあります。
この記事では、仕事ができる人が「仕事ができない人」と感じることなく、相手の強みを引き出し、協力して成果を上げる方法をご紹介します。
このアプローチは、経営者たちから尊敬されているピーター・F・ドラッカーの経営哲学に基づいています。
弊社「Dラボ」は、ピーター・F・ドラッカーの勉強会を主催している企業です。ドラッカーといえば、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』（もしドラ）で知られている方も多いでしょう。
この記事を読むことで、多くの経営者を成功に導いてきたドラッカーのアプローチを学び、仕事ができないと感じていた相手が「最高の仕事仲間」に変わり、仕事が楽しくなることでしょう。
以下では、仕事ができない上司、先輩、部下、同僚のそれぞれの立場で、どのように接するべきかについて解説します。最初に、すべての立場で重要な共通の考え方に触れますので、ぜひお読みいただき、「その視点は新鮮だ」と感じていただけることでしょう。ドラッカーは、仕事ができる人ほど陥りがちな「思い込み」を打ち破る鋭い洞察を持っていたからです。
目次
【思考編】仕事ができない人に優しくなるための究極の「考え方」3つ
①成長は本人自身の問題
ドラッカーは、成長は何よりも本人の課題であり、他者によって引き起こされるものではないと明言しています。
「仕事ができない人に優しくできない」と感じる理由には、おそらく「なぜ私が教えてやっているのに、仕事ができないんだ！」という情熱が裏返っているでしょう。
まず最初に、「成長を促すべきだ」という硬直した考えを捨てましょう。
②人は誰もが強みと弱みを併せ持つ存在
誰もが他人の弱みに注目しがちです。多くの上司は、強みを活かすよりもまず弱みを克服することが先決だと考えています。
しかし、ドラッカーはこの視点を共有しませんでした。むしろ、彼は強みの中に弱みがあり、逆もまた然りであるとし、すべてを受け入れながらも、強みを活かして成果を上げるべきだと提案しました。
最初に、強みと弱みは裏表のようなものであり、誰もが欠点を抱えていると考えましょう。そうすれば、建設的な発想で仕事仲間と接することができるでしょう。
③性格が合わなくても成果を上げれば良い
漫画やドラマでは「チームの絆が深まり、成功に導かれる」という感動的なエピソードがよく描かれます。一般的には「仲が良いほど良い」とされがちです。
しかし、ドラッカーは非常に興味深い見解を持っていました。彼は無数の企業を観察しコンサルティングした結果、一つの結論に至りました。それが先に引用した言葉です。
例えば、スポーツの世界で「チームの結束が高まった結果、ビッグプロジェクトが成功した」という話は良く聞かれます。しかし、ドラッカーの言葉からは、成果がない限りは温かな関係やコミュニケーションは意味を持たないと言えるでしょう。
もしも性格が合わなくても、成果を上げることができれば十分です。その成果が焦点である限り、失礼な言葉があろうとも関係は損なわれません。
「仕事ができない人に優しくできない」理由について振り返ってみれば、「態度が気に入らない」「性格が合わない」といった感情があるかもしれません。
確かに、仕事ができない人が生意気な態度を取られると、イライラすることもあります。しかし、冷静に考えてみてください。その人が強みを生かして成果を上げれば、全員がより幸せになる可能性があります
【行動編】仕事ができない人に優しくなるための「接し方」3つ
①自分で考える機会を与える
「仕事ができない人に優しくできない」と感じる場合、マイクロマネジメントに陥っている可能性があります。これは相手の細かな行動に口を出して指示するやり方であり、相手のモチベーションと自主性を損なうNGな手法です。マイクロマネジメントは組織に悪影響を与えるため、改善が必要です。
仕事ができない人に優しくできるよう心掛けるためには、相手に考える余地を与えることが大切です。成果のゴールをはっきりさせ、その目標に向けて創造的なアイデアを出す余地を提供しましょう。このためには「成果」の定義が重要であり、その詳細については以下の「②貢献に焦点を合わせて話をする」で解説されています。
②貢献に焦点を合わせて話をする
上司の場合、仕事ができない人に対して何ができるか考えることが重要です。それは「成長の機会を提供する」ことです。権限が制限されている場合でも、たった一つの質問で自己成長の契機を与えることができます。それは「お客様が喜ぶために何を、どのようにすれば良いか」という問いかけです。
ここで注目すべきなのは、「お客様が喜ぶ」という視点です。数字だけではなく、仕事の成果が他者にどれだけ貢献できるかが重要です。これに気づくことで、自主性が引き出されます。仕事ができない人は存在しません。むしろ、貢献意識が芽生えていないことが原因で意欲が低いのです。まずはその視点から考え、相手が仕事の意義を真剣に理解する手助けをしてみましょう。
③相手の強みを生かすためのコミュニケーションを図る
できないことに焦点を当てると本質が見えくくなります。仕事ができない部下との関係で大切なのは、弱みだけでなく強みも理解することです。ドラッカーの引用にもあるように、「できることは何か」という問いに対して、丁寧に部下の強みを見つけ出すことが歩み寄りの一環となります。
仕事ができない人にイライラするときは自分に8つの質問を投げかけよう
以下は、上記の質問を考慮して、柔らかく表現した文章です。
相手に自分のルールや常識を押し付けていないかどうかを振り返ってみましょう。お互いが尊重される空間で仕事を進めることが重要です。
自分のやり方が絶対的に正解かどうかを考えてみましょう。異なるアプローチやアイデアが新しい視点をもたらすことがあります。
自分より仕事ができないと感じたときに見下す態度はないかどうかを確認してください。お互いが協力し合うことで、より良い成果が生まれることもあります。
相手が自分の意向に従わせるような態度をとっていないか、振り返ってみましょう。お互いが自由に意見を交換できる雰囲気が大切です。
相手と共有できる仕事の意義やビジョンがしっかりと確認されているかを確かめましょう。共通の目標に向かって進むことは、チームの一体感を高めます。
相手に失敗するチャンスを与えているかどうかを考えてみましょう。失敗から学び、成長する機会を提供することが大切です。
相手の強みだけでなく、弱みにも目を向けているかどうかを確認してください。お互いの補完関係がチームを強化します。
性格の違いからくる摩擦を理由に相手を見捨てないように気をつけましょう。多様な意見やスタイルが豊かな仕事環境を作り出します。
まとめ：視座が高くなれば付き合い方も変わる！
私たちはなぜ他者と協力して仕事をするのでしょうか。20世紀の偉大な社会学者、マックス・ウェーバーは組織を「目的をもった社会集団」と定義しました。組織は何らかの目的を達成するために存在しているのです。
組織は目的を達成する手段であると言われると、多くの人は一応納得できるでしょう。しかし、現実において、「成果」に対して意識的に行動できている人はどれだけいるでしょうか。
ドラッカーは、成果を上げるためには、働く人全員が手元の仕事から顔を上げて、組織が果たすべき使命に注視しなければならないと述べています。そうでなければ、視点が低くなり、低いレベルの仕事しかできなくなってしまうでしょう。
「給料さえもらえれば良い」「言われたことだけやっていればいい」「それは自分の仕事じゃないから関係ない」……視点が低いと、成果への意識が薄れることがあります。
これは人間関係にも当てはまります。上司・部下・同僚の関係で起こるトラブルの多くは、「成果を出すためにはどうすればいいか」という視点がないために生じるものです。
今回の記事で取り上げた「仕事ができない人に優しくできない」という悩みの本質には、「相手の弱みばかりに目が向いている」という問題が潜んでいる可能性があります。
デニス・ロッドマンとマイケル・ジョーダンのように、相手の強みを知り、生かすための人間関係を築くことこそが、真に生産性のある組織づくりです。
ドラッカーはGoogleなど一流企業の経営者たちに学ばれるほどの影響力を持つ人物でした。今回の記事を読んでくださったあなたには、ぜひドラッカーの思考を仕事に活かし、上司としてのスキルを更に向上させてほしいと願っています。
