自己の名前を誤って呼ばれる瞬間は、確かに気分を害するものです。
相手が私と一緒にいたいと思ってくれているのか、それとも私に対して嫌悪感を抱いているのか、そんな心配が頭をよぎります。もし相手が嫌いな人であれば、「もしかして他の誰かと顔が似ているのかも?」と不安が募ります。
特に、好意を抱いている相手から名前を誤られると、「脈がないのかな?」と気分が滑り落ちることもあります。
しかし、心理学の理論によれば、このような状況を逆にポジティブに捉えることができるのです。
呼び間違いは潜在意識の情報がうっかり出てくる?
言い間違いや呼び間違いといったミスは、しばしば無意識の影響によるものと説明されます。
通常、口にする言葉は自覚的に意識される顕在意識の情報です。しかし、潜在意識には我々が意識的に感じていない情報が多く含まれ、それには抑圧された願望なども含まれています。
言い間違いや呼び間違いが起こるのは、何らかの理由で潜在意識の情報がうっかりと口に出てしまうからです。潜在意識と顕在意識の関係は、しばしば図で表現されます。
たとえば、「会社に行きたくない」とか「早く仕事が終わって欲しい」という思いを抱えている人がいるとします。すると、朝に出社して挨拶するべき場面で、「おはようございます」というべきところをうっかり「お疲れ様でした」と口にしてしまうことがあります。
フロイトの著書でも、このような心理現象が取り上げられています。
この潜在意識の影響による説明では、好きな人からの呼び間違いはあまり良いシナリオとは言えないとされることがよくあります。
好きだから呼び間違いをしてしまう
自分の名前を誤って呼ばれる瞬間は、一般的には気分が沈むものです。特に、そのような状況が好きな人から起こると、ますます気落ちしてしまうことでしょう。
しかし、デューク大学のサマンサA.デフラー博士の研究によれば、実はこれは好意の表れなのだそうです。彼女の調査では、1700人以上にアンケートを行い、最も頻繁に起こる呼び間違いが親が子供の名前を誤って呼ぶ場合であることが明らかになりました。兄弟姉妹がいる人なら、上の子を下の子の名前で呼んでしまった経験があるかもしれませんね。
他にも、仲の良い友達同士での呼び間違いもよく見られるそうです。例えば、親友Aの名前を親友Bで呼んでしまうことがあります。これは、呼び間違いが同じ意味を持つグループ内で頻繁に起こる傾向があるからです。
なぜなら、人は単語を記憶する際に、同じ意味のものを脳内で同じグループに分類して保管するからだと説明されます。例えば、「家族」「親友」といったカテゴリがあり、その中に複数の名前が入っていると、近い意味を持つ名前同士を声に出す際に取り違いが生じやすいのです。
この傾向から逆算すると、遠くにある名前は呼び間違えにくいと言えます。友達を芸能人の名前で呼ぶことはあまりないでしょう。名前の呼び間違いは、脳内での意味づけと距離の関係に起因していると言えそうです。
呼ばれた名前は良い意味?悪い意味?
好きな人に呼び間違えられた場合、そのとき呼ばれた名前がどのカテゴリに分類されているかを確認することが重要です。つまり、好きな人がその名前に対してどのような感情を抱いているのかを知る必要があります。
もし好意的な感情を抱いているであろう人の名前で呼ばれたならば、それは良い兆候と言えるでしょう。しかし、逆に嫌っている人の名前で呼ばれた場合は危険です。その人もあなたも「嫌いな人」というカテゴリに同時に保存されている可能性があります。
さらに、好意的なカテゴリであっても、それが家族的な愛情に基づくものであれば、脈ありとは言い切れないかもしれません。家族的な愛情と恋愛感情は異なるため、名前の呼び間違いだけではその人の本当の気持ちを正確に読み取るのは難しいかもしれません。
要するに、名前の呼び間違いは相手の感情を知る手がかりであり、その背後にある感情や関係性を理解することが大切です。ただし、一度の呼び間違いだけで全てを判断するのは難しく、相手とのコミュニケーションを通じて感情や意図をより深く理解することが必要です。
元カノの名前で呼ばれたら?
好きな人からの呼び間違いで最も気になるのは、恐らく元カノの名前が口にされたときではないでしょうか。
先に述べた潜在意識の影響による説明では、まだ心の中に元カノに関する感情が残っている可能性が考えられます。
一方で、脳内のカテゴリによる説明はやや複雑な気分をもたらすかもしれません。例えば、好きな人の中で元カノが「恋愛感情を持つ相手」というカテゴリに入っているなら、その名前で呼び間違われたことは脈アリのサインかもしれません。ただし、まだ元カノに未練がある場合、大喜びは難しいでしょう。
逆に、すでに元カノを「どうでも良い人」または「嫌いな人」のカテゴリに移動していた場合は、より深刻な事態となります。なぜなら、あなたもそのカテゴリに入ってしまっている可能性があるからです。言い換えれば、これは脈ナシの可能性が高いことを示唆しています。
ただし、そのような状況でも必ずしも落ち込む必要はありません。なぜなら、挽回するチャンスがないわけではないからです。好きな人に呼び間違いをされたときは、その呼ばれた名前がどのカテゴリに属しているのかを確認することで、今後の恋愛の戦略をより賢明に立てる手がかりになるでしょう。